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今回は東京大学2009年度後期総合科目Ⅱの第一問のAを解説します。
[問題]
多くのデータを扱うことは、さまざまな分野で必要になる。大量のデータを整理する際に、ある基準によってデータの間に序列をつけることが有用である。また、データを転送するときには、ノイズによる転送の誤りの確率を小さくするようんば工夫が必要である。
A
n種類の成分A_1,…,A_nを混ぜ合わせて製品を作る。この製品に含まれるA_1,…,A_nの重さの比率のデータをp_1,…,p_nとする。ここで、p_1,…,p_nは
Σ(k=1~n)p_k=1,0≦p_k≦1,k=1,…,n
を満たす実数である。またA_1,…,A_nの単位質量あたりの価格をx_1,…,x_nとする。ただし,x_1,…,x_nは
x_k<x_(k+1),k=1,…,n-1
を満たす正の定数である。この製品の単位質量あたりの材料の費用は
v=Σ(k=1~n)x_kp_kで表される。
(A-1)材料の費用vが最小となるような、p_1,…,p_nの値を求めよ。
(A-2)q_1,…,q_nも
Σ(k=1~n)q_k=1,0≦q_k≦1,k=1,…,n
を満たす実数とする。
すべてのm=1,…,n-1に対して
Σ(k=1~m)p_k≦Σ(k=1~m)q_k
となるとき、それぞれの製品の材料の費用について
Σ(k=1~n)x_kq_k≦Σ(k=1~n)x_kp_k
が成り立つことを示せ。
(A-3)n=3とし、
p_1≧p_3,p_2≧p_3
が成り立つとする。このとき、材料の費用vが最大となるような、p_1,p_2,p_3を求めよ。
[解答と解説]
なんかデータとか単位質量の材料の費用とか、書いてますがまたおっさんがなんか言うてるなって思って軽く流しておいてください。
わけわからんわ~ってなんも考えずに読むのがコツです。
(A-1)
これは明らかにp_1=1,p_2=p_3=…=p_n=0の時です。
その当たり前を証明します。
簡単なのは、とりあえず不等式で大小関係を作って、それが等号が成立する場合が最小値って言う論法を使うと簡単です。
v=Σ(k=1~n)x_kp_k
≧Σ(k=1~n)x_1p_k
ってx_kをx_1にかえた方が小さいって言うのを使います。
x_k>x_1ですが、p_k≧0だからp_kが0の場合もあるから
x_kp_k≧x_1p_k
です。
またΣ(k=1~n)p_k=1だから結局
v≧x_1
こういう大小関係が成立していて、
p_1=1,p_2=p_3=…=p_n=0の時、等号が成立するからx_1が最小値になります。
だから
答えは
p_1=1,p_2=p_3=…=p_n=0の時
(A-2)
これはうまい方法があると思いますが、ここは少々汚らしくてややこしいやり方でも定石にしたがったら出来るってことは大切なことやから、定石にしたがって
Σ(k=1~n)p_k=1
Σ(k=1~n)q_k=1
の式から、
p_n=1-Σ(k=1~n-1)p_k
q_n=1-Σ(k=1~n-1)q_k
で文字を消去します。
Σ(k=1~n)x_kp_k-Σ(k=1~n)x_kq_k
=Σ(k=1~n-1)x_kp_k-Σ(k=1~n-1)x_kq_k+x_n(p_n-q_n)
=Σ(k=1~n-1)x_kp_k-Σ(k=1~n-1)x_kq_k+x_n(1-Σ(k=1~n-1)p_k-1+Σ(k=1~n-1)q_k)
=Σ(k=1~n-1)x_kp_k-Σ(k=1~n-1)x_kq_k+x_n(Σ(k=1~n-1)q_k-Σ(k=1~n-1)p_k)
≧Σ(k=1~n-1)x_kp_k-Σ(k=1~n-1)x_kq_k+x_(n-1)(Σ(k=1~n-1)q_k-Σ(k=1~n-1)p_k)
と言うように、Σ(k=1~n-1)q_k-Σ(k=1~n-1)p_k≧0の仮定を使ってx_n>x_(n-1)だからx_(n-1)の方が小さいを使います。
すると
Σ(k=1~n-1)x_kp_k-Σ(k=1~n-1)x_kq_k+x_(n-1)(Σ(k=1~n-1)q_k-Σ(k=1~n-1)p_k)
=Σ(k=1~n-2)x_kp_k-Σ(k=1~n-2)x_kq_k+x_(n-1)(Σ(k=1~n-2)q_k-Σ(k=1~n-2)p_k)
≧Σ(k=1~n-2)x_kp_k-Σ(k=1~n-2)x_kq_k+x_(n-2)(Σ(k=1~n-2)q_k-Σ(k=1~n-2)p_k)ってまた同じようにΣ(k=1~n-2)q_k-Σ(k=1~n-2)p_k≧0の仮定を使ってx_(n-1)>x_(n-2)だからx_(n-2)の方が小さいが使えます。
これを繰り返すと
Σ(k=1~n)x_kp_k-Σ(k=1~n)x_kq_k≧…
≧x_1p_1-x_1q_1+x_1(q_1-p_1)=0
って等式が示せました。
ついでに、等号成立を考えておくとこの証明の仕方から
すべてのm=1,…,n-1に対して
Σ(k=1~m)p_k=Σ(k=1~m)q_k
つまり
p_k=q_k(k=1,2,…,n)の時です。
(A-5)
n=3のときやから、文字がp_1,p_2,p_3の三つです。
しかしp_1+p_2+p_3=1だから実際には二つの文字で決まります。
と言うことは、グラフで考えたらいけるんちゃうか?って言う一つの方針が立ちます。
まあ色々な方法がありますが、やっぱり数学はまずは図を書いてみるって言う習性をつけて欲しいからグラフでいきます。
p_3を消去するには同値変形をするテクニックを使ってください。
これはよく東大で使われます。
p_1+p_2+p_3=1
p_1≧p_3
p_2≧p_3
0≦p_3≦1
(0≦p_1≦1,0≦p_2≦1)
って全部式を書き出して、p_3=1-p_1-p_2をすべての式に代入して同値な変形をしてまとめていきます。
⇔
p_3=1-p_1-p_2
p_1≧1-p_1-p_2
p_2≧1-p_1-p_2
0≦1-p_1-p_2≦1
⇔
p_3=1-p_1-p_2
p_2≧1-2p_1
p_2≧1/2-p_1/2
-p_1≦p_2≦1-p_1
こうやると、p_1,p_2が
p_2≧1-2p_1
p_2≧1/2-p_1/2
-p_1≦p_2≦1-p_1
を満たしていればp_3は
p_3=1-p_1-p_2
で自動的に決まることになります。
だから
p_2≧1-2p_1
p_2≧1/2-p_1/2
-p_1≦p_2≦1-p_1
の範囲だけ考えたらオッケーなことになります。
こういう同値変形のテクニックを東大を受けるなら身につけてください。
v=x_1p_1+x_2p_2+x_3p_3
=x_1p_2+x_2p_2+x_3(1-p_1-p_2)
⇔
p_2=-(x_3-x_1)/(x_3-x_2)・p_1+(x_3-v)/(x_3-x_2)
これでp_1p_2平面で
p_2≧1-2p_1
p_2≧1/2-p_1/2
-p_1≦p_2≦1-p_1
の領域を通る直線p_2=-(x_3-x_1)/(x_3-x_2)・p_1+(x_3-v)/(x_3-x_2)でp_2切片(x_3-v)/(x_3-x_2)が最小になるものを選べば、vが最大になります。
領域を書くと、p_2切片が最小になるには、直線の傾きによって変わります。
直線の傾きは-1より小さいわけですが、
-2<傾き<-1では(1/3,1/3)を通るときがp_2切片が最小で
傾き=-2の時は直線p_2=-2p_1+1に一致するときがp_2切片が最小で
傾き<-2の時は(p_1,p_2)=(0,1)を通るときp_2切片が最小になります。
(i)-2<-(x_3-x_1)/(x_3-x_2)つまり2x_2<x_1+x_3
のとき、p_2切片が最小になるのは
(p_1,p_2)=(1/3,1/3)つまり
(p_1,p_2,p_3)=(1/3,1/3,1/3)のとき
(ii)-(x_3-x_1)/(x_3-x_2)=-2つまり2x_2=x_1+x_3
のとき、p_2切片最小になるのは直線p_2=-2p_1+1上の点ならいいから
tを実数として
(p_1,p_2)=(t,1-2t)
と媒介変数を使ってあらわしたらよくて,図から領域と直線の共通部分は
0≦p_1≦1/3だから0≦t≦1/3です。
よって
(p_1,p_2,p_3)=(t,1-2t,t)
(iii)
-(x_3-x_1)/(x_3-x_2)<-2つまり2x_2>x_1+x_3
の時、p_2切片最小になるのは
(p_1,p_2)=(0,1)のとき
つまり
(p_1,p_2,p_3)=(0,1,0)です。
以上をまとめたらオッケーです。
これは難易度はむしろ前期より簡単なぐらいですが、この手の類の問題をやったことあるか無いかって言うのがかなり勝敗を左右しそうな気がします。
やっぱり、しっかり東大の過去問研究してる人は見慣れた感じがするとは思います。
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