受験数学わんこらスクール
京大理学部で数学をやったわんこらが中学生や高校生、受験生に数学の公式や問題を解説します。

二重級数の和の命題の証明
前に=には等しいと言う意味と、≧かつ≦が成り立つ意味があるを書きましたが、もう一度書くと

数学のイコール=には

1、両辺が等しい

2、左辺≧右辺かつ左辺≦右辺

と言う二つの意味があって、この左辺≧右辺かつ左辺≦右辺を使う例を紹介しますわ。


大学で習う数学では、これを使った証明多いからなあ。

ぜひ身につけて欲しいやり方やねん。



次の二重級数の命題を見てください。

命題
100116m1.jpg

a_m,n≧0であるとき

Σ(m,n=0~∞)a_m,n ,
Σ(m=0~∞)Σ(n=0~∞)a_m,n ,
Σ(n=0~∞)Σ(m=0~∞)a_m,n

の内の1つが収束すれば、他の二つも収束して、三つの値は一致する。



この証明で使います。

その前に、定義を確認しとこか。

まず二重級数とは何かと言うと

100116m2.jpg

こんなイメージです。



これでだいたいわかったと思うねんけど、もう少し詳しく書いていくとここではa_m,n≧0だけ考えていくとして

100116m3.jpg

○二重数列(a_m,n)_(m.n)∈N^2はN^2=N×N上で定義されたRの値をとる函数である。

そして

○Σ(m,n=0~∞)a_m,nを二重級数と言う。

ほんまはこう書くと二重級数の和と同じ表記になってまうねんけど、便利だからこう書くそうな。

それでこの二重級数の和を定義していきたいねんけど、まずは

○FをN^2の有限部分集合全体の集合とする。

○F∈Fに対する部分和sFを

sF=Σ(m,n)∈F a_m,n

によって定義し、すべてのa_m,n≧0となる二重級数に対して
s=sup_F∈F sF
をその和と言い、s=Σ(m,n=0~∞)a_m,nと記す。


だからΣ(m,n=0~∞)a_m,nはm,nを同時に極限とるような感じで、
Σ(m=0~∞)Σ(n=0~∞)a_m,nは先にnの極限をとってからmの極限をとっていて、
Σ(n=0~∞)Σ(m=0~∞)a_m,nはmの極限をとってからnの極限をとっている。


それでこの極限とる順番は一つでも収束すれば、他の二つも収束して値が等しいから極限の取り方は交換してもよいと言うのがこの命題やねん。


そしてこの証明には=は≦かつ≧と言う意味があると言うのを使います。


[証明]
100116m4.jpg

三つの値をそれぞれα,β,γとする

α≦βかつα≧βを示すことでα=βであると言いたくて

a_m,n≧0よりα,β,γ∈R~(=R∪{±∞})

∀p,q∈N,([0,p]×[0,q])∩N^2∈Fより
Σ(m=0~p)Σ(n=0~q)a_m,n≦sup_F∈F Σ(m,n)∈F a_m,n=α

よってqで極限とった後、pで極限をとると
lim(p→+∞)lim(q→+∞)Σ(m=0~p)Σ(n=0~q)a_m,n≦α

β≦α


100116m5.jpg

今度は反対を作りたくて
∀F∈F,∃p,q∈N,F⊂([0,p]×[0,q])∩N^2
だから
Σ(m,n)∈F a_m,n≦Σ(m=0~p)Σ(n=0~q)a_m,n
≦Σ(m=0~p)Σ(n=0~∞)a_m,n
≦Σ(m=0~∞)Σ(n=0~∞)a_m,n=β

よってF∈Fについて上限をとって

sup_F∈F Σ(m,n)∈F a_m,n≦β

α≦β

だからβ≦αかつα≦βよりα=βと示せて、アルファ,βのうち一方が有限ならば他方も有限になってます。

αとγは全く同じようにやれば出来ます。



この手の証明はルベーグ積分とかでも出てくるから、これで覚えておけば役に立つと思います。



ついでにこの命題は具体的にどう使うかと言うと主には定義や定理の証明は書きませんが
a_m,nが負になる項があるのも二重級数を定義しておいて

次の定理があります。

100116m6.jpg

次の3つの級数
Σ(m,n=0~∞)|a_m,n|,
Σ(m=0~∞)Σ(n=0~∞)|a_m,n|,
Σ(n=0~∞)Σ(m=0~∞)|a_m,n|
のうち1つが有限なら、他の二つも有限で
Σ(m,n=0~∞)a_m,n
=Σ(m=0~∞)Σ(n=0~∞)a_m,n
=Σ(n=0~∞)Σ(m=0~∞)a_m,n


それでこれらを使って次の値が求まります。

100116m7.jpg

|x|<1,|y|<1の時Σ(m,n=0~∞)x^my^n


[解答]
100116m8.jpg

そのままでは足しにくいですが、

1、まず扱いやすい順番の極限で絶対収束することを示すことで極限の順序を交換できることを確認

2、求まりやすい極限の順番で計算する

の手順でやっていきます。

Σ(m=0~∞)Σ(n=0~∞)|x^m||y^n|=Σ(m=0~∞)|x^m|/(1-|y|)
=1/((1-|x|)(1-|y|))<∞

よってΣ(m,n=0~∞)x^my^nはの極限の順序を交換してよくて

Σ(m,n=0~∞)x^my^n=Σ(m=0~∞)Σ(n=0~∞)x^my^n
=Σ(m=0~∞)x^m/(1-y)
=1/((1-x)(1-y))



この解答の仕方も、ルベーグ積分のFubiniの定理を使うとこでよく出てくるから覚えておいたら役に立つと思います。


数理物理




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